2021.9.1 Wed
相続は突然やってくる -相続前におさえるべき遺産と期限の話-
こんにちは。
不動産相続アドバイザーの尾嵜豪です。
相続って、なかなかとっつきにくい話題かと思います。
身近な方が亡くなることで発生するお金のやり取りというのは、話すこともはばかられるのではないでしょうか。
しかし、相続は突然やってきます。
相続は、被相続人(=相続をさせる側)が死亡すると、否応なしに始まります。
相続方法や諸手続きは大半が期限付きですので、何も準備がない状態から始めるのはとても大変です。
相続のトラブルは、被相続人の遺言で避けられる場合も多くあります。
遺された方々や大切なご家族のためにも、相続についての知識はしっかりつけておくべきです。
今回は、これだけはおさえておきたい相続手続きの期限についてフォーカスを当てて、お話をしていきます。
動画でも同じ内容を見て頂けるので、ぜひご参照ください。
プラス・マイナスの遺産
すでにご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、遺産には遺族にとってプラスになるものとそうでないものがあります。
遺産=入ってくるお金だけだと勘違いしてしまうと、大借金を相続してしまった、なんてこともあるかもしれません。
相続手続きを進める前に、被相続人の遺産についてしっかり調べておくことが非常に重要です。
・現金・預金
・不動産
・有価証券(株式、債券など)
・その他財産(車、宝飾品、家具など)
・借金・ローン
・家賃・光熱費等の未払い金
・未払いの税金
・慰謝料、損害賠償金
遺産について調べるには、まずは被相続人の自宅から関係書類を探し出しましょう。
役所や銀行などで分かる場合もあるため、なるべく丁寧に探すことが大切です。
大切な3つの期限
相続の手続きは膨大かつ複雑なことも多々ありますが、特におさえておきたい3つのポイントについてお話しします。
→3か月:相続の方法を決める
→4か月:被相続人の税金の納付
→10か月:相続税の申告・納付
まず、被相続人が亡くなってから3か月以内に、相続の方法について決める必要があります。
以下の3つから選択ができます。
1.単純承認
プラスマイナス関わらず、全ての遺産を相続する方法。
何も手続きしないまま3か月が経過すると、自動的に単純承認とみなされます。
逆に言うと、単純承認で良いならば相続方法についての手続きは必要ないということです。
2.限定承認
単純承認との違いは、相続する範囲にあります。
単純承認では、被相続人の遺産に大きくマイナスがあったとしても全ての債務を引き受けることになりますが、限定承認ではそのマイナス分は、プラス分でまかなえる範囲での相続になります。
これは被相続人の遺産が分からない場合などで有効です。
例えば、故人Aの遺産が現金100万円だったとします。
ただ、その現金以外の資産が分からなかったため限定承認としました。
その後、Aに200万の借金があったことが発覚しても、100万円分の債務のみで済む、ということになります。
非常に便利な方法ですが、
・相続人全員で申告しなければならない
・手続きが煩雑
この2点に留意して判断しましょう。
相続放棄
文字通り、相続の権利を完全に放棄する方法です。
どう見ても負債の方が多い場合、この方法をとることが多いでしょう。
こちらも3か月以内に手続きが必要ですが、限定承認と違ってそれぞれ単独で放棄を行えるため、ハードルは低めです。
一般的には以下のような選び方になります。必ずこうすべきということではないため、あくまで参考程度に見ておいてください。
明らかなプラス →単純承認
明らかなマイナス →相続放棄
不明 →限定承認
次に、4か月以内に、被相続人の所得税を納める必要があります。「準確定申告」と呼ばれるものです。
被相続人が亡くなった年の1月1日から、亡くなった当日までの被相続人の所得税を、相続人が代わって納めます。
「被相続人」の納税地におさめる必要がありますので、注意しましょう。
最後に、10か月以内に相続税の申告と納付をします。
他二つと比べると期限が長いですが、被相続人の遺産を調査し、書類を用意するなど非常に手間がかかることが多々あります。
遺言によって遺産や分割方法が明記されているのであれば良いですが、どこから手を付けたらよいか分からない状態であれば、税理士などプロに頼ることも必要です。
まとめ
以上、遺産の種類と相続の期限について、初歩的なポイントをピックアップしました。最後に本日の復習をまとめてみましょう。
●遺産→プラスにもマイナスにもなり得る
●どれだけの遺産があるのかチェックすることは最重要ポイント
●相続の3つの期限
・3か月以内…相続方法の選択
・4か月以内…被相続人の税金の納付
・10か月以内…相続税の申告・納付
次回は、「法定相続と遺言はどちらが勝つ?」というテーマでお話しします。